『誰にも教えたくない喫茶店』
- stainedglasssumire
- 2021年1月27日
- 読了時間: 2分
映画『繕い、裁つ人』を鑑賞しました。静かな話ですが、ワンシーンごとに登場人物達の心の動きが丁寧に描かれていて、私はとても心地良い気持ちになりました。その中でも印象的だったのが、喫茶店の場面です。
主役の女性は相手役の男性に目の前にある喫茶店に誘われた時に、「ここは駄目」とぴしゃりと答えます。彼は意図が汲み取れなかったようですが、その後のシーンで実はその喫茶店が彼女のお気に入りの場所だったとわかります。確かに、私にも簡単に人に教えたくない喫茶店というのは存在します。きっと彼女にとって、心のオアシスの喫茶店だったのです。
彼女と彼はその後その喫茶店で偶然再会し、相席することになるのですが、初め気まずそうにしていた彼女が、好物のチーズケーキを彼と一緒に黙々と食べる展開になり、その姿に二人の関係が近づいていく様子を私は感じました。そして、彼が去ってしまったある日、喫茶店でいつものチーズケーキを口にした彼女がはっとした顔をして、味が変わったかと尋ねたところ、店主は、変わらない、と答えます。これは、彼女の中に彼と共有したケーキの味の記憶が新しく刻まれた証拠だといえます。自分の大切にしている所へ、誰かを招き入れることは、勇気がいり、変化も伴いますが、一人では理解できない新鮮な気持ちを知ることができるものだと気付かされた物語でした。
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